草根木皮みな薬
 

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黒龍江中医薬大での講義(中医治療、糖尿病及び合併症の思路と方法)

病院の薬局1糖尿病患者は、世界中で89億人いる。
そのうち、J型(インシュリン依存型)は5〜10%だが、K型は90〜95%で遺伝や生活習慣による現代病といえる。
国際糖尿病連盟(IDF)は11月4日を糖尿病の日としており、
1.飲食方法、2.運動方法、3.血糖監測、4.薬物治療、5.糖尿病教育
を啓蒙している。
薬物治療の場合は、インシュリンだと依存症にある可能性があり、降血糖薬だと腎臓に負担がかかる。
糖尿病は、
1.早期に治療すること。漢方+飲食療法で治ることがある。
2.中晩期は漢方で改善される。
3.合併症は、西洋医学ではあまりよい方法はないが、漢方では臓器(腎など)を守る方法がある。
4.インシュリンに対する抵抗を起こしたら、漢方が効く。病院の薬局2
中医学での治療の考え方は、
1.弁病弁証の結合
2.方証相対(弁証によって処方を作る)
3.病機により鑑別(詳審病機)
治療原則は、
1.整体観、2.動態観、3.常度観(常に変化する中に相対的に動かないもの)
治療方法としては、
1.調衝性(陰陽バランス)、2.適度性、3.個体化、4.治病求本、5.順応性、6.因勢利導。
治療について分解、臓腑証治は、
1.鬱証、2.熱証、3.虚損。
鬱証には、
・食鬱--脾による証治
・気鬱--情志
・湿鬱--食鬱と関係がある。太った人は熱を発散しにくい。
・血瘀--食鬱と湿鬱どちらも血瘀になりやすい。
食鬱、気鬱、湿鬱は熱証になり、肝による証治で通腑、清化湿熱、活血清熱。
虚損は虚実夾雑しており、虚による論治、瘀 による論治。
ケース1)
糖尿病歴3年、インシュリン2か月、帯状包疹、めまい、口渇、乏力、足無力、大便乾燥、痒い、舌根・舌苔剥落、舌前と中は黄で乾燥し舌苔は虚実夾雑
方剤:太子参30g、生石膏40g、知母5g、大黄5g(単包)、麦門冬15g、石斛15g、天花粉15g、生地黄15g、枸杞20g、五味子15g、砂仁10g、全蝎15g、蜈蜙1条 を4日分の水で煎じる。大黄は通便したら使わない。生石膏知母は陽明気分熱を清し、太子参は補気、麦門冬石斛 天花粉生地黄枸杞は補陰、全蝎蜈蜙は瘀血をとる。証は気陰両虚、風熱。
太子参に関連しての説明として、
紅参・白参は全身の気を補うが、紅参は熱性で白参は熱性があるが紅参よりは弱い。
党参は平性で、中焦の気を補い、食事の後にもたれる人によい。
太子参は凉性に偏り、力なく喉が乾く人によい。
西洋参は、五心煩熱で陰気内熱の人によく、気陰虚がひどいときに用いる。
ケース2)
女、45歳、太っている、心煩、怒りやすい(肝の疏泄が過ぎると横に溢れて人に怒る、肝の疏泄が不足すると鬱状態になり、自分に怒る)
方剤:柴胡15g、枳殻15g、炒白芍15g、甘草15g、生梔子15g、黄芩15g、側柏葉15g、半夏15g、茯神20g、太子参30g、生竜骨生牡蠣各20g、丹参20g、鬱金5g、鬼箭羽(ニシキギ・駆瘀血)15g、治則:疏肝理気。
ケース3)
57歳、高血圧、高脂血、尿酸高、ALT↑、AST↑、中性脂肪↑、血糖9.88、睡眠不足、舌苔黄厚
熟地黄15g、石決明20g、沢瀉15g、茯神20g、牡丹皮15g、山薬15g、鶏内金50g、鬼箭羽15g、石葦20g、金銭草30g を7日分を水煎服。3カ月後正常になった。腎による論治。

中薬による血糖降下としては、
1.直接降糖、2.間接降糖があり、直接血糖を降下させる中薬は56種ある。生姜紫蘇などは血糖は上がり、単味で柴胡を使った場合も血糖は上がる。
間接降糖する場合は、失眠・過労・疼痛・生理不順などで血糖が上がる場合などで、そのときの治則は
1.消除失眠、2.消除便秘、3.消除疲労、4.消除急慢感染、5.調経、6.止痛。
失眠(不眠)のケース)
失眠2年、毎週1回2時間の睡眠、太っている、疲労、口渇、舌体太、脈弦滑、飲酒。体は陽が陰に入ると眠ることができる。朝、陽が陰から出ると目覚める。が、痰湿に囲まれているので、それができない。
方剤:半夏20g、陳皮15g、茯神20g、甘草15g、生姜15g、大棗5枚、竹筎15g、枳殻15g、黄連10g、人参15g、夜交藤30g、酸棗仁30g、砂仁10g、熟地黄10g、丹参20g を7日分したところ、1日で眠ることができた。
この場合、脾虚から痰湿が来ており、急病入絡により瘀血が生じている。半夏、陳皮、竹筎は化痰、生姜大棗人参は健脾、夜交藤は一薬多用で、安眠・祛瘀 。
生地黄でなく、熟地黄を使うのはなぜか、という問いに対し、先生は、通常は熟地黄は使わないが、2年間眠れないということは腎陰を損傷している。血脈が傷ついているので、湿盛+陰虚と判断、陰虚の症状は見えないが推理している、とのでしでした。
この方は、方剤投与を止めたらまた眠れなくなったそうで、薬を止めると痰湿が集まって来る。湿性粘滞、不易連去、湿はねばっこく留まり去りがたい。

合併症のときは、活血通絡する必要がある。血瘀は糖尿病後期の合併症の共通項。
症状は、血滞(行血)→血瘀(活血)→瘀血(破血)→干血(滋陰通経)と少しずつ変化する。
ケース1)
女、10歳、J型、血糖20.6、尿糖+++、脈拍115、心電図-ST下降、血圧90.5、新規、短気、舌紅
方剤:人参15g、亀板20g、生地黄15g、玉竹20g、五味子15g、麦門冬15g、地骨皮15g、黄精15g、枸杞20g、黄耆50g、丹参20g、山茱萸15g、沙参10g、知母15g、陳皮15g、蛤蚧1対(オスとメス) を6日水煎服。
ケース2)
20歳、2か月入院、脳膜炎、脳内高圧による頭痛・嘔吐、熱39〜40度、脳内圧降下薬の効果なし、大便乾燥、口渇、乏力、悪心
方剤:大黄15g、芒硝15g、厚朴15g、枳殻15g、生一末(薏苡仁末)30g、芦根20g、沢瀉15g、太子参30g、白茅根30g を3日水煎服。