便秘
膳食原則
便秘は腸道津虧(腸の中の水液の不足)、伝導無力あるいは気機鬱滞が特徴です。したがって、潤滑の食品、たとえば蔬菜、果物、豆乳、胡麻油などをとるのがよいのです。甘いものは少なくし、食物がお腹に留まるのを防ぎます。助熱傷津(熱を発生し体の中の水分をなくす)の食物は、便秘を重くします。
潤腸食物、植物油類、桃仁、松子、胡麻等を多くとります。そして、粗繊維食物である未精白の穀物、麦麸食品、豆類、スープセロリやニラなどを合わせて取ります。さらに、気を多く生む食品であるジャガイモや大根などを多くとります。
排便不暢が主要症状ですが、単食で下す食品は不可であり、証に合わせて食事します。
便秘の分類
| 証 |
症状 |
施膳 |
| 実熱による便秘(熱秘) |
大便乾結、小便短赤、顔の色が赤い、体の芯に熱がある、あるいは腹脹、口乾口臭を兼ねる。舌紅、苔黄あるいは黄燥、脈滑数。 |
泄熱通便(熱をさまし、便を通す |
| 気滞による便秘(気秘) |
大便秘結、ゲップが多い、胸肋脹満、胃のあたりがつかえる、食欲不振、あるいは腹痛、熱感がある、口乾。舌淡紅あるいは紅、苔薄膩、脈弦。 |
順気行滞(気をめぐらし、滞りをなくす) |
| 気虚による便秘(虚秘) |
便意はあるが出す力が乏しく、排出するのが困難、汗が出て息切れする、便をした後甚だしく疲れる、顔の色が白く光っている、神経が疲れている。舌淡嫩、苔白、脈弱。 |
益気潤腸(気を補い、腸をうるおす) |
| 血虚による便秘(虚秘) |
大便秘結、顔の色に華がない、めまい、心悸健忘、あるいは頬が赤い、耳鳴。舌淡、脈細あるいは舌紅少苔、脈細数。 |
滋陰潤燥(陰血を補い、乾燥しているのでうるおす) |
| 陽虚による便秘(冷秘) |
大便難渋、排出困難、小便は澄んでいて量が多い、顔の色は青白い、四肢不温、暖かいのを好み寒いのがいや、腹中冷痛、あるいは腰や背中が冷たく重い。舌淡、苔白潤、脈沈遅。 |
温腸通便(腸を温めることにより、便を通す) |
実熱便秘の薬膳
| センナと卵のスープ |
センナ5〜10g、鶏卵1個、ほうれん草少々 |
卵は碗に入れ、溶く。センナを自ら煎じ、カスを鶏、卵を流し入れ、ほうれん草を加え、塩で味をととのえる、ふっとうしたらできあがり。 |
泄熱導滞。実熱便秘に応用する。センナは甘苦寒で瀉下導滞在、清導実熱、鶏卵は甘平益気養血、ほうれん草は甘凉、潤燥通便でともに性熱通便の作用がある。熱がなくなったら食べてはいけない。 |
| なすの決明子煮 |
決明子10g、ナス2個、塩・醤油・大豆油適量 |
決明子に適量の水を加え煎じ汁をとる。なすを油で炒め、薬汁に入れ、軟らかくなるまで煮る。 |
清熱通便。この薬膳は実熱便秘の者に用い、清熱することで潤腸し通便する。決明子は甘苦微寒で、大腸経に帰経し、清熱潤腸、通便、なす場甘凉で、脾経、胃経、大腸経に入り、清熱、寛腸の作用がある。 |
| 筍とスープセロリの和えもの |
若い筍100g、スープセロリ100g |
筍は薄切り、スープセロリはざく切りにし、沸騰した湯で茹でる。お湯を切り、熱した適量の油をかけ、塩で調味する。 |
清熱通便。筍は甘寒、清熱、和中、潤腸、スープセロリは甘苦微寒、清熱、平肝、凉血の作用がある。二者合わせると、清熱通便の効き目がある。燥熱はなはだしくない便秘軽症に適用する。 |
| クラゲと黒クワイのスープ |
クラゲ100g、黒クワイ150g、香菜少々 |
水泡が発生したくらいの湯にクラゲを入れてから、洗ってざく切りにする。黒クワイは皮をとり薄切りし、ともに沸騰したスープに入れて煮る。香菜、食塩、仕上げの胡麻油を入れる。 |
清熱通便。クラゲは鹹平、清熱潤腸、化痰消積で、黒クワイは甘寒、清熱生津、化痞消積の作用がある。 |
気滞便秘の薬膳
| 木香と檳榔の粥 |
木香5g、檳榔5g、米100g |
木香、檳榔を自ら煎じ、カスをとり、米を入れて粥にする。氷砂糖を適宜加える。 |
順気行滞。木香は行気調中、檳榔は行気導滞。緩慢瀉通便で、補佐に米、氷砂糖は、健脾調中と調味を兼ねている。 |
| 枳実、決明子、大黄の餅 |
枳実10g、決明子5g、大黄2g、とうもろこしの粉400g、白砂糖適量 |
枳実、決明子、大黄を粉末にし、トウモロコシ粉と合わせ、白砂糖、水を加えて練り、丸めて蒸し器で蒸す。 |
順気行滞。気滞便秘証で口乾、舌苔が黄色く、脈が数に用いる。枳実は行気消積通便で、決明子は清熱潤腸通便、大黄は清熱瀉下攻積、とうもろこしは調中開胃寛腸の作用がある。 |
| 大根の枳実煮 |
枳実10g、大根・干しエビ・ラード・ネギ・生姜・塩適量 |
枳実は自ら煎じ汁をとる。大根はぶつ切りにし、鍋にラードを入れて炒め、干しエビを加え、薬汁を適量加え、軟らかくなるまでとろ火で煮込む。ネギど生姜の千切りを入れ、塩で調味する。 |
順気行滞。枳実は行気消積、大根は下気寛中、ラードは潤腸通便の作用がある。 |
気虚便秘の薬膳
| 黄耆と紫蘇の種の粥 |
黄耆10g、紫蘇子50g、麻の実50g、米250g |
米以外を洗って火であぶって乾かし、粉末にする。薬汁をとり、米を入れて粥にする。 |
益気潤腸。黄耆は補中益気、蘇子は下気寛腸、麻の実は潤腸通便で、さらに、うるち米は補脾和胃の作用があり、合わせて気虚の便秘証に用いる。 |
| 麻の実と栗の餅 |
麻の実10g、胡麻5g、栗の粉50g、とうもろこし粉50g、黒砂糖適量 |
麻の実、胡麻は打ち砕き、栗の粉、黒砂糖、とうもろこし粉とともに合わせる。水を加えて練り、丸めて蒸し器で蒸す。 |
補益脾腎、潤腸通便。この薬膳は脾腎気虚の便秘者に適用する。栗子は甘温、補脾益腎、麻の実と胡麻は甘平、潤腸通便、とうもろこしは甘平、補中健胃の作用がある。 |
| 黄耆と木香のシロップ |
黄耆300g、木香45g、蜂蜜適量 |
黄耆、木香を洗い、水を適量入れて煎じる。30分ごとに煎液をとり、再び水を加えてとる。1回目と2回目の煎液を合わせ、とろ火で粘りが出るまで煮詰める。その分量と同量の蜂蜜を加え、一度沸騰させて火を止める。冷めたら瓶に詰める。 |
補気行気、潤腸通便。黄耆は補肺気、補脾気で君薬であり、蜂蜜は腎腸通便で臣、補佐は木香で補中有行、滞りを除く。気虚便秘あるいは気滞津虧の者に適用する。1日2回、スプーン1杯をとり、お湯でわって飲む。 |
| 人参と黒胡麻の飲物 |
朝鮮人参5〜10g、黒胡麻15g、白砂糖適量 |
黒胡麻はすりつぶす。朝鮮人参を水から煎じてカスを取り去り、黒胡麻と白砂糖適量を入れ、一度沸騰させる。 |
益気潤腸、滋養肝腎。朝鮮人参は大補元気、補脾益肺、黒胡麻は滋養肝腎、潤燥滑腸、補佐は白砂糖で補腎潤肺の作用がある。気虚による便秘で目眩がし、髪が白く、腰や膝が重だるい者によい。 |
| ジャガイモと肉蓯蓉のシロップ |
ジャガイモ1kg、肉蓯蓉20g、蜂蜜適量 |
肉蓯蓉は水から煎じ汁を適量とる。ジャガイモは洗って細かく切り、絞り汁をとる。二汁を合わせて鍋に入れ、粘りが出るまで煮詰める。その汁と同量の蜂蜜を加え、いったん沸騰させて火を止める。 |
益気温陽、潤腸通便。気虚による便秘で手足が冷たい者に適する。ジャガイモは甘平、健脾和胃、益気寛腸、肉蓯蓉は甘鹹温で、補腎助陽、1日2回空腹時にスプーン1杯飲む。 |
血虚便秘の薬膳
| 豚の心臓の柏子仁煮 |
柏子仁15g、豚の心臓1個、醤油適量 |
豚の心臓の中に柏子仁を入れ、器に入れて蒸して柔らかくする。薄切りにし、醤油を少々加える。 |
養血潤燥。柏子仁は甘平、養心安神、潤腸通便、豚の心臓は鹹平、補気養血の作用がある。 |
| 卵の何首烏煮 |
何首烏50g、鶏卵2個 |
何首烏と玉子に水を加え、土鍋で一緒に煮る。玉子が煮えたら、取り出し再び煮る。玉子は薄切りにして食べ、スープを飲む。 |
養血潤燥。何首烏は補益精血、潤腸通便、鶏卵は補気養血の作用がある。 |
| 当帰と柏子仁の粥 |
当帰20g、柏子仁15g、米100g、氷砂糖適量 |
当帰、柏子仁は洗い、鍋に水カップ1とともに入れ、とろ火で煎じて半量にする。カスを取り去り汁を取る。米を洗い、水を適量薬液とともに入れ、鍋で煮て粥にする。まず強火で沸騰させ、その後とろ火で粥になるまで煮る。氷砂糖を適量加え、粘りが出るまで煮る。 |
養血潤燥通便。当帰は補血潤腸、柏子仁は潤腸通便、うるち米と氷砂糖は和中調味の作用がある。 |
| 鳳髄湯 |
松の実50g、桃仁50g、蜂蜜500g |
松の実、桃仁は泡が出るまで水に浸し、うす皮をむく。火であぶって乾かし粉末にし、蜂蜜と和える。 |
養陰潤腸。松の実は甘平、滋陰潤腸、桃仁は甘温、通潤大腸、蜂蜜は甘平、補中潤燥。津虧腸燥便秘者に用いる。 |
| バナナの生地黄煮 |
生地黄20g、バナナ2房、氷砂糖適量 |
生地黄は水から煎じ、カスを取り去る。その薬液と皮をむいてぶつ切りにしたバナナと適量の氷砂糖といっしょに煮る。 |
養陰清熱、生津潤腸。便秘証で陰虚内熱者が1日2回服用する。 |
| 桑の実と地黄のシロップ |
桑椹500g、生地黄200g、蜂蜜適量 |
桑椹、生地黄を洗い、水を適量加えて煎じる。30分ごとに煎液をとり、再び水を加えて2回煎液をとる。両方合わせてとろ火で煮詰め、粘りが出たら、同量の蜂蜜を入れ、一度沸騰させて火を止める。 |
1日2回、スプーン1杯に沸騰した湯を注いで飲む。 |
陽虚便秘の薬膳
| 肉蓯蓉と羊の腎臓のスープ |
肉蓯蓉30g、羊腎1対、ネギ・生姜・醤油・ごま油少々 |
羊の腎臓を切り開き、筋膜を取り、洗って細切りにする。醤油と片栗粉で下味をつける。鍋に適量の水を入れ、肉蓯蓉を入れ約20分煎じ、カスを取り去る。それに羊の腎臓を入れて一緒に煮る。柔らかくなったらネギ、生姜、塩、ごま油を入れて調味する。 |
温陽通便。肉蓯蓉は尾温補腎陽、潤腸通便、羊の腎臓は補腎気益精髄。合わせると、陽虚の便秘者にもっともよい。 |
| くるみの粥 |
くるみ15g、米100g |
くるみはすりつぶし、米といっしょに煮て粥にする。 |
温陽通便。くるみは甘温、補腎温肺潤腸、うるち米は甘平、補中胃の作用がある。 |
| 鎖陽と黒砂糖の飲物 |
鎖陽15g、黒砂糖適量 |
鎖陽を水から煎じ、カスを取り去る。黒砂糖を適量加え飲む。 |
温陽潤腸通便。鎖陽は甘温、補腎助陽、潤腸通便、黒砂糖は甘温、温中養血。合わせて温中通便の膳となる。2回に分けて飲んでもよい。 |
| 牛膝、肉蓯蓉と当帰のシロップ |
牛膝50g、肉蓯蓉500g、当帰50g、蜂蜜適量 |
蜂蜜以外を適量の水に浸し、泡がでたら加熱して煎じる。20分ごとに1回目の煎液をとり、再び水を入れて煎じ3回とる。それを合わせてとろ火で煮詰め、粘りが出たら同量の蜂蜜を加え、沸騰したら火を止める。冷めたら瓶に入れる。 |
温陽通便。牛膝は強腰腎、気を下行させことができる。肉蓯蓉は温補腎陽、潤腸通便、当帰は養血潤腸、蜂蜜は補中潤燥。合わせて温潤開挙、陽虚便秘に応用する。 |
| 鎖陽、肉蓯蓉入り羊の麺 |
鎖陽5g、肉蓯蓉5g、羊肉50g、小麦粉200g、生姜・ネギ・塩適量 |
鎖陽、肉蓯蓉を水から煎じ、カスを取り去り、冷ましてから小麦粉といっしに練り麺にする。別に羊肉を煮、麺、生姜、ネギ、塩を入れ煮る。 |
温容通便。鎖陽、肉蓯蓉は補腎助陽、潤腸通便、羊肉は補気養血、温中暖下。合わせて陽虚便秘者の膳となる。この薬膳は分けて食べてもよい。 |